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解像度を低く

by tajima

ことしもフジロックに行けなかった。
仕事や生活のあれやこれやが疎ましい。

フジロックの存在を知ったのは、東京ベイサイドスクエアを会場にして開かれた1998年の第2回だ。
僕は行けなかったけど、友達が行った。
土産にパンフレットをもらった。
青色を基調とした薄い冊子だった。
友達からは、布袋寅泰が洋楽ファンから大ブーイングを浴びて「お前ら豚だ」と叫んだという話を聞いた。
ミュージシャンがどう猛な客を豚呼ばわりするイベントって最低で最高だと思った。
パンフレットはとっくになくしたけれど、そのエピソードだけはなんとなく覚えている。
これが僕にとっての最初のフジロック。

ことしのフジロックはコーネリアスと小沢健二の両方が出演するということで話題になった。

同じバンドだった2人の出演に「まさかの共演があるんじゃ」なんてツイッター上では何日も前から大盛り上がりだった。
当日もタイムライン上にどんどん情報が流れ込んでくる。
会場は大雨。
オザケンの出番が近付くと入場規制がかかり、柵がぶっ壊れた。
本番前のSEにドラマ「カルテット」の主題歌が流れた。
1曲目は「今夜はブギー・バック」でスチャダラと共演した。
MCで「ロック好きな人、愛しているぜ」と言った。
アコースティックセットでは、新曲「流星について」をファルセットで使わず、いつもより低い節回しで歌った。

スマホを眺めているだけで、セトリや会場の様子がほぼ同時に伝わってくる。
さらにライブの終演を待たずして、動画がアップされる。

ピントが合わず、手ぶれした映像。
オザケンの歌よりも、客の熱唱が聞こえる。

冷房の効いた部屋で靴下を脱ぎながら、情報を集めていると不思議と会場にいる気になってくる。
いつか消されるかも知れない荒々しい動画に、これまでのライブの記憶が重なる。
解像度の低さに同時性が合わさると、臨場感が強くなる。
ちょっとリアルに錯覚する。
だって実際に会場に行ったら、整った環境で楽しめるわけじゃないでしょ。
これがWOWOWのきれいな映像だったら「ああ、ここに行きたかったなあ」となるだけなのかもしれない。
おおげさに言うと、海賊放送がハイレゾに勝利した瞬間だった。

ふと思い付いてメルカリを開く。
会場限定で販売されたステッカーとLEDライトのセットが2千円高く売られている。
はい。買いました。



tajima
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