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今日の人生

by tajima

益田ミリさんの新著「今日の人生」(ミシマ社)を落掌した。
切り絵をモチーフにした色鮮やかな装丁がおしゃれ。
この表紙のためだけに買ったっていい。

益田さんは本当に人の心揺れを動くのがうまい。
キャラクターの性別や性格のタイプ、年代を問わずうまい。
そういうこと言う人いるし、そういうことを自分も思う、って思う。

新著はエッセーのような一冊なのだろうか。
多分作者本人の経験体験を基にしたと思われる「今日」が淡々と描かれる。
こうやって取り上げなければ忘れてしまうであろう、気持ちの動きを素朴な線で構成されたキャラクターと、シンプルなせりふで表現する。

例えば、マッサージ屋さんに行ったら、指圧の強弱をうまく指示できない。
スタバで隣の女性客のテーブルから聞こえてきた味わい深いひと言。
旅の荷物のミニマム化を目指すひととき。
父親とモノを投げ合うような喧嘩をしても、お互いテレビにだけはぶつけないようにする配慮。
その父が亡くなった日。
そして亡くなったことを思い出す瞬間が突然やってくる。

30コマ近い「今日の人生」もあれば2コマの「今日の人生」もある。1日の濃淡は日によって違うもんね。

ぼくが好きだったのは、飲み会の記念写真を撮ろうとする集団に遭遇すると、こんなせりふが聞こえてきたという「今日」だ。

酔っ払った写真しかないのよね、四十過ぎたら

なんか分かる。
四十過ぎてないけれど、人生って感じがする。

何かの出来事といより、それを通じての微妙な心の動きを見て取ったとき、その一瞬を読み手も疑似体験するだろう。
老いや死を意識してしまうこともあるだろう。
だからこそ今ある自分の日々を愛おしく大切に思う。
それが少し過酷であろうと。

初版限定で本のあちこちに「今日の食卓」の写真が入っている。
食べることは生きることだよね。


tajima
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